『パラサイト 半地下の家族』は、第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初のパルム・ドールを受賞した作品。
公開直後、日本でも大きな話題になっていたので映画館へ行こうと思っていたけれど、コロナの影響もあり観に行けず仕舞いで、今回Netflixで視聴しました。
私は韓国ドラマや韓国のアイドル、食文化に興味はあるものの、「映画」はあまり観たことはなく、監督の名前すら今まで存じ上げなかったのだけれど、観終わったあと思っていた以上の面白さにただただ驚いてしまいました。
大事な部分にはネタバレ無しの感想です。
あらすじ
半地下で暮らすキム家は父ギテク、母チュンスク、息子ギウ、娘ギジョンの4人家族。全員失業中で、近所のピザ屋の宅配箱を組み立てる低賃金の内職で生計を立てていた。
ある日、息子のギウの友人で名門大学に通う青年ミニョクが自分が留学する間、資産家であるパク家の女子高生ダヘの英語の家庭教師をやらないかとギウに提案する。
浪人中のギウは高い報酬のこともあって、大学生と偽って仕事を受けることを決意した。名門大学の入学証書を偽造してもらうと、ギウは大学生のふりをして高台の高級住宅地を訪れる。
パク夫人も授業の様子を見学する中、物怖じしない態度でダヘの授業を終えたギウはパク夫人の信頼を得て、英語の家庭教師の仕事が正式に決まる。
帰り際、壁に息子ダソンの描いた絵が飾ってあることに目をつけたギウはパク夫人が絵の家庭教師を探していることを聞き出す。ギウは「一人思い当たる人物がいる」とパク夫人に告げる。
ギウの「思い当たる人物」とは妹のギジョンだった。後日、ギウの大学の後輩を装ってギジョンがパク家を訪れる。
人の良いパク夫人は疑うことを知らず、専門用語を使って達者に話すギジョンはすっかりパク夫人に信用され、ダソンに絵を教える先生として雇われる。
その夜、仕事を終えたパク氏が帰ってきた。パク氏は夜道を女性ひとりで歩かせるわけにはいかないと、運転手にギジョンを送るよう言う。
その車中、運転手はしつこく家まで送ると言うが、家を知られるわけにはいかないギジョンは断る。ギジョンは策略を巡らせこっそりとパンティーを脱ぎ、助手席の下に下着を押し込んだ。
翌日車からパンティーを発見したパク氏は運転手を解雇する。運転手がいなくなり困っているパク家に、ギジョンは親戚に良い運転手がいると言う。こうして、父ギテクも、パク家に運転手として雇われた。
パク家に仕える家政婦のムングァンは建築家の代からこの家で家政婦をやっており、食事を2人前食べる以外は欠点らしい欠点がない。
ムングァンがひどい桃アレルギーだと知ったギウはムングァンに桃の表皮の粉末を浴びせる。ギテクはパク夫人に韓国で結核が流行しているという話と、ムングァンを病院で見かけたという話を吹き込む。
アレルギーで咳き込むムングァンや血のついたように偽装されたティッシュを見せられたパク夫人はムングァンが結核だと確信し、解雇する。
新しい家政婦は必要だが誰でも良いわけではなく困っているパク氏に、ギテクはパク家に雇われる前にスカウトの話があったという架空の高級人材派遣会社の名刺を渡す。
名刺の連絡先はギジョンのガラケーにつながり、シナリオ通り年収の証明などの煩雑な手続きをアナウンスし信用を高めて送り込まれた母チュンスクは、パク家に新しい家政婦として雇われることになる。
キム家の4人は全員が家族であることを隠しながら、パク家への就職に成功した。
そして……
感想
半地下のアパートに暮らすキム一家が首尾よくパク家で働くことなるまでの流れは、まさにスパイコメディのようでドキドキしました。
このキム一家、当然人を騙す詐欺師集団なのだから褒められた話ではないのだけれど、なんだか憎めない可愛らしさがあって、ついつい応援したくなってしまうから不思議だ。ニセ者とはいえ、仕事に対しても、真面目に取り組んでいる様子があって嫌いにはなれなかった。
この映画の中で、後半の悲劇を引き起こすきっかけとなるキーワードが「匂い」。
キム一家がパク家で働くようになった時、息子のダソンは同時期に就職してきた4人が同じ匂いをしていることに気づいた。
キム一家は「洗濯する時の洗剤をそれぞれ変えようか?」と話し合ったりするものの、その匂いは「半地下で暮らしている人間の匂いだからどうしようもない」と言う結論に至る。
私は今までよく知らなかったけれど、韓国も諸外国と同じく格差社会が深刻らしい。
パク家のように、家政婦や運転手を雇えるだけの収入がある家族がいる一方で、半地下のアパートが密集するスラム街のような所に住むキム一家のような家族もいる。それが韓国の現状だそうです。
『パラサイト 半地下の家族』には基本的に悪人が1人も登場しないけれど、人を憎まずにはいられない構図は存在していた。
パク氏は自分の運転手として働くギテクの仕事ぶりには満足しているにも関わらず、妻に「運転手の匂いが臭くてたまらない」と話をしている。そしてこの「匂い」が引き起こす後半の悲劇がとにかく衝撃的…。目が点になるってこういうこと?ってくらい点になりました。
『パラサイト 半地下の家族』は展開の面白さからするとエンターテインメントの部類に入っても良い気がするけど、本質的には社会派の作品だと思います。とにかく、とても見応えのある作品でした。これからは韓国映画も気をつけてチェックしたいと思った次第です。